【全固体電池とは?】全固体リチウムバッテリーによる蓄電技術のパラダイムシフト

みなさんが普段何気なく使っているスマホやPCのバッテリーや小型充電池には、リチウムイオンバッテリーが使われております。

そんなリチウムイオンバッテリーは、実はまだまだ性能が伸びるポテンシャルを秘めております。

かの有名なイーロンマスク率いるテスラ社が、大金を叩いて世界中にギガファクトリーと呼ばれる大規模工場を作るほど重要なリチウムイオンバッテリー。

今後の社会変革の一翼を担うであろう、リチウムイオンバッテリーの未来について、今回は特集します!

シンギュラリティ到達における蓄電池技術の重要性については、以下の記事のプレシンギュラリティの部分をどうぞ。

関連記事:【技術的特異点】シンギュラリティとは?~人類労働解放宣言~

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リチウムイオンバッテリーの経緯と特徴

それでは、リチウムイオンバッテリーがどのような経緯で生まれたかをざっくりとみていきましょう。

現在、当たり前のように使われているリチウムイオンバッテリーですが、実はリチウムを用いたバッテリーとしては、初めに金属リチウムバッテリーという固体のバッテリーが開発されておりました。

金属リチウムバッテリーは、電解質が固体であり、エネルギー密度が高いという特徴がありました。

しかし、大きなデメリットもありました。

それは、電極表面にデンドライトと呼ばれる固体リチウムが析出し、それがショートすることで発火の可能性があるということです。

このような危険性から、結果として金属リチウムバッテリーは普及しませんでした。

そこで、このデメリットを補う形で開発されたのが、電解質(イオンを運ぶもの)に液体の有機溶媒を用いた、皆さんご存知リチウムイオンバッテリーです。

さらに、

リチウムイオンバッテリーのメリット・デメリット

リチウムイオンバッテリーには以下のメリットがあり、普及しました。

【リチウムイオンバッテリーのメリット】

・充電速度が速い

・発火の危険性が固体と比較して低い

しかし、固体よりは発火の可能性が低いとはいえ、スマホやタブレットの電池の爆発のニュースがたまに流れていることからわかる通り、依然発火の可能性があります。

また、デメリットとしては以下が挙げられます。

【リチウムイオンバッテリーのデメリット】

・エネルギー密度が低い

・電解質が有機溶媒であり発火の危険性

・充放電回数が増えるにつれて性能劣化

・他の蓄電手段に比べて、コストが高い

及第点はクリアしており普及しているものの、まだまだ課題は沢山あるということがわかりました。
続いて、リチウムイオンバッテリーのコスト推移について概観していきましょう

リチウムイオンバッテリーのコスト推移

リチウムイオンバッテリーって、一昔前まで高かったイメージがありませんか?

スマホ用の充電池は、大きくて重いわりに容量が1000mAh程度と小さく、そのくせ2000円ぐらいと高価であった覚えがあります。

iPhoneが出始めた頃のスマホは、使い物にならないほどバッテリー持ちが悪かった記憶があります。

それが、最近では小型タイプのものでも安いものだと10000mAhが2000円程度で買えますね!

実際、例えば運輸交通用途でのリチウムイオンバッテリーのコストは、2010年から2016年末までの間に最大で73%下落したと言われております。

更に、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、定置型蓄電池のコストが2030年までに最大66%低下するとの見通しを2017年に発表しました。

ということで、リチウムイオンバッテリーの単価はまだまだ下がっていくことが見込まれます!

バッテリー性能に対する市場の要求

現状普及しているリチウムイオンバッテリーは、スマホなどの小さな電力需要に対してはおおよそクリアしております。

一方で、その他の分野では出力、エネルギー密度(容量)、充電速度の面で、以下のような世界的な需要があります。

再生可能エネルギーの分散化のための蓄電要望

ビル・ゲイツ氏は2010年に行ったTED講演にて、再生可能エネルギーの普及に必要となるバッテリーについて、以下のコメントを残しております。

「いま入手できるバッテリーをすべて集めても世界中で使われている電力の10分間分も供給できない。
電力の100%をまかなうには、今の100倍以上に貯蔵能力を改善できる奇蹟的な技術革新が必要だ。」

2010年と比較したら随分成長しましたが、揚水発電や太陽光・風力発電の蓄電用途など、再生可能エネルギーによる電力分散化普及に対して蓄電技術がボトルネックになっているようにも見受けられ、まだまだ革新的なパラダイムシフトが要求されております。
最近はテスラ社がパワーウォールと呼ばれる家庭用蓄電池を開発しましたが、値段も性能面もまだまだこれからといったところですね。

電気自動車(EV)からの要求

電気自動車の航続距離は数百キロにまで到達し、蓄電容量は徐々に需要を満たし始めておりますが、充電時間の問題や、重量・コスト面など、こちらも技術革新が必要とされております。

テスラ社は、世界中にEV用のリチウムイオンバッテリー工場であるギガファクトリーを展開し、EVの世界需要に応えようと鋭意努力しておりますが、現状はバッテリーがボトルネックになっている印象です。

以上から、リチウムイオンバッテリーのデメリットを解消してほしいという要望が多分野にわたって生じていることがわかります。

前章では価格がまだまだ安くなっていくと見込まれていることを確認しましたが、充電速度やエネルギー密度、出力などの性能はどのようになっていくのでしょうか?

皆さんお待ちかね、世界の最先端研究の説明に移ります!

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救世主、全固体リチウムバッテリーとは?

【ミシガン大学の研究】

ミシガン大学の機械工学教授であるジェフ・サカモト氏が考案したアイデアとして、全固体リチウムバッテリーという、金属リチウムバッテリーを進化させたようなものがあります。

電極に用いる金属リチウムの表面をセラミック製の固体電解質でコーティングすることで、デンドライトが析出せず発火の危険性のない金属リチウム電極の開発に成功しました!

【全固体リチウムバッテリーメリット】

・リチウムイオンバッテリーの2倍以上のエネルギー密度

・発火危険性無し

・劣化しない

リチウムイオンバッテリーのデメリットをほぼ完全に解消!

ミシガン大学の研究員ネイザン・テイラー氏の発言によると、22日間の長期実験を行った結果、バッテリーの電極は一切劣化しておらず、これほど長い間うまくいった全固体リチウム電池は見たことがないとのことです。

【その他の機関による研究】

トヨタ自動車は東京工業大学らと全固体リチウム電池の共同開発を行い、既存のリチウムイオン電池に対してエネルギー密度が2倍、出力密度が3倍以上となる試作品を開発しました。

出力密度が高いということは充電速度も速いため、EV用であれば約3分で充電できる可能性もあるということです!

EVの課題はバッテリーの充電時間、エネルギー容量(走行可能距離)、バッテリー重量・体積などが挙げられますが、このバッテリーなら充電速度が文字通り桁違いに速いため、充電頻度を増やすことで走行距離を大幅に伸ばすことができます

大容量バッテリーを積む必要がなくなるため、車両の軽量化・低価格化が期待できます!!

さらに、東工大らは界面抵抗(充放電のしにくさ)が従来の全固体リチウムバッテリーよりも2桁程度小さく、一般的なリチウムイオンバッテリーに比べても1桁小さくなる事を実証しました!ものすごい進歩です!!

14mA/cm2という大電流でも安定して高速充放電することに成功し、超高速充放電を100回行っても電池容量の劣化は全く見られなかったとのことです!

こんなにも目覚ましく進歩している全固体リチウムバッテリーが近い将来に実用化されると考えると、なんだかワクワクしてきませんか?最先端科学技術が人々を魅了するのは、このワクワク感に寄るものでしょう!

ところで、リチウムイオンバッテリーには更なる進歩の余地はあるのでしょうか?

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パラダイムシフト:三次元微細最適化形状リチウムイオンバッテリー

(出典:http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2018/ee/c7ee03571c#!divAbstract

まだあるのです、抜本的に世の中を変貌させるパラダイムシフトのシーズが!!

コーネル大学のエンジニアたちが、革新的な構造であり驚異的な性能を誇るナノオーダーの三次元微細最適化形状リチウムイオンバッテリーを開発しました。

特徴は以下です。

  • 厚さ20nmの複雑な構造の正極と負極のセットを大量に用いる事で表面積を飛躍的に拡張した結果、数秒程度、場合によっては1秒未満で充電が可能
  • 正極と負極の間には、厚さ10nmの絶縁コーティングがなされている。
  • この構造ではバッテリーをショートさせるような微細な気孔が形成されないため、発火しない
  • この微細構造により、高い出力を得ると同時に、従来のものよりもエネルギー密度が高くなる

充電時間数秒!

おサイフケータイ感覚でEVのバッテリー充電が可能になるなんて、これぞパラダイムシフトの面目躍如!!

Viva La Technology!!!

まとめ

リチウムバッテリーのこれまでの流れと、革新的技術である全固体リチウムバッテリー、夢の未来技術であるナノオーダーの3D微細最適化形状バッテリーまで見ていきました。

長かったですが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

冒頭でも述べましたが、リチウムイオンバッテリーをはじめとした蓄電技術がエネルギーフリーを導く布石となり、やがてシンギュラリティへの道を拓くというお話について、以下の記事にまとめておりますので是非お読みください!

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